ラサラス女神綺譚

第3話 ヒルダガルデ

 

 

「あらー!アリア、どうしちゃったの!凄く綺麗よ、似合ってる!」
「やぁ、ヒルダ。アルベーも久しぶり。・・・このドレスは、その・・・不可抗力だ」
「もしかして、リヴァイ兄様と婚約したから?それで今日は婚約者として来てるの?」
「・・・今日はその話は聞きたくない」
「え?アリア、リヴァイ殿下と婚約したの?ようやく?」
「アルベー、人の話を聞け!あと『ようやく』ってなんなんだよ」
  久しぶりに会ったアリアは、珍しいことにドレスを身に纏っていた。白地に銀の糸で刺繍がしてあって、ところどころに青や翡翠色の宝石がちりばめられている。制服を勝負服だと思っているアリアがこんな趣味の良いものを選ぶわけがない。きっと、アリアのことをよく知っている者が選んだのだろう。その「者」については、目星どころか確信があるけれど。
「ガウェインに今日は絶対にドレスで出ろって命令されたんだよ。」
「どうして?あ、もしかして。制服だと他の人に埋もれちゃうから、少しでもボリュームのある服を着て自己主張しろ、みたいな?あはは!」
「アルベー・・・お前はホントに昔っから優しそうな顔して言いたいことははっきり言うちゃっかりさんだよな」
  アルベルト・セレスタン・アルドロバンディーニ。通称アルベーは、わたくしの夫。 2 つ上で、アリアと仲の良かった彼をわたくしが好きになり、こちらからの猛烈プッシュのおかげで結婚したの。今は王城を離れ、彼の家の経営する魔法研究所がある所で静かに暮らしているわ。王都シャウラの郊外なのでそんなに王城から距離もないし、とても便利で良いところよ。
「ヒルダ!アルベルトもようこそ。楽しんでるかい?」
「あらリヴァイ兄様。アリアがドレス着てるんだけど、何か兄様と関係があるの?」
「ああ。俺とアリア、実はこ
「言うな!なにも言うな。まだ何にもなってないだろ!」
  『まだ』?ってことは、やっぱりこれから何かなるのかしら?
「リヴァイ、今日は私の近くに寄るな!あっち行け!」
「えー?俺はアリアと一曲踊りたいんだけど」
「誰が踊るか!それにお前、身長差をよく考えろ!」
  アリアは自分で言った言葉にちょっとショックを受けていたけど、そのまま「またあとで」とわたくしに耳打ちし、足早に逃げていった。
「リヴァイ兄様、ちゃんと話が決まったら、このヒルダにもきちんとご報告くださいまし?」
「もちろん!」
  やっぱりだ。この兄様の笑顔。やっぱり何かあったに違いない。

 アリアとは、もう 10 年以上の仲。
  彼女と初めて会ったのは、わたくしたちが 11 歳の頃、アリアがアルファルド帝国から帰還してすぐだった。帰り道でよほど必死だったのだろう、身長は元より体も痩せこけてとても同級生とは思えないほど小さかった。両親を殺され、住み慣れた土地を追い出され、見知らぬ土地で監禁され。その後は士官学校へ女性第 1 号として入学し。彼女の人生は、とてつもない悲しみととてつもない苦労でいっぱいだったに違いない。それでもわたくしは、アリアが泣いている所は一度たりとも見たことはなかった。
  アリアの士官学校がお休みの日、リヴァイ兄様に付いて何度も遊びに行ったことがあった。はじめからアリアに興味深々なわたくしに対し、あの子は最初から、・・・いえ、最初の頃なんか特に苦手そうだった。入学して数ヶ月たったある日、いつものように兄様について会いに行くと、なんと口調が男言葉に変わっていた。この方が都合が良いから、と事も無げに言う彼女の心境が信じられず、わたくしは何度も女性らしくするように言ったっけ。思えばその頃から、アリアはわたくしよりも兄様とばかり楽しそうに話をするようになった。そりゃそうよね、性別の垣根を越えて何ものにも打ち勝とうとしている子に、性別にばかりこだわるようなことを言ったら、嫌われるに決まっているわ。でも、あの頃のわたくしはそんな簡単なことにも気付けないほど、おろかだった。それどころか、王の娘であるわたくしのお零れにあずかろうとする人々ばかりの中、一向に媚を売ろうとしないアリアにわたくしはますます興味を持った。
 アリアが魔法科を選択して半年後、わたくしはアリアに相談したことがあった。しつこく言い寄ってくる男がいる。何度嫌だと言っても理解せず、気持ち悪い甘い台詞を吐いてくる。何とかして欲しい、もし良い魔法を知っていたら是非教えて欲しい、と。アリアは少し考えたのち、 7 単語で出来た呪文を1つ授けてくれた。もしもどうしても使うときは、良く考えてから使うように、との忠告も付け足して。
  もちろん、使った。その魔法は、わたくしに甘い言葉を囁こうとすると口からカエルが出てくる、というなんとも間抜けなものだった。その男は何故カエルが飛び出てくるのか分からないようだったけれど、数日かけてようやく分かったようだった。もちろんわたくしは魔法を解くことなんてできないし、わたくしに関わらなければよいだけのこと。とっても心がスカッとしたわ。アリアに感謝した。
  けれど 1 週間たった頃、リヴァイ兄様に神妙な面持ちで呼ばれた。
「アリアに悪戯の魔法を教えて貰って、それを使ったって?・・・あいつ、顔に殴られた痣が出来てたぞ」
  次の休みの日、アリアの宿舎へ飛んでいった。アリアはわたくしになかなか会おうとはしてくれず、それならアリアを殴った教官に弁解しようとしたところで、ようやく彼女は出てきた。少し薄くはなっていたけれど、切れた口の端はまだ治りきっておらず、赤く痛々しく腫れていた。
「ヒルダ。お前は分かってないようだが、私は遊んで暮らす為にアルファルドから帰還したわけでもないし、遊びでここに来ているわけでもない。お前は王の娘だから、ある程度の我が儘は許される。教えられた魔法でよその貴族に悪戯したからって、問題にすらならないだろう。でも、その一方で悪戯を教えた私はこうして罰を受けることになるんだ。今回は殴られるだけで済んだが、もしかしたら退学になっていたかもしれない。私には理由と確固たる決意があって今こうしてここにいる。退学は何としてでも避けたいが、王族であるお前の頼みと私の士官学校での生活どちらかを選ばねばならない場合、私はラサラスの民として王族の願いを優先しなければならない。・・・お前はそこまで理解した上で、私と接しているのか?男の言葉を使おうが、ひらひらしたものを身につけなくなろうが、それは私が自分の意思で決めたことだ。お前が私をコントロールしたいのであれば、私とお前の身分上、それは可能なことだ。お前がそれでよいと思ったのなら、そうすればいい。けれど、私は自分の進む道を邪魔する者を、『友人』だなんて認めない。」
  その後、アリアは「それでは失礼いたします、ヒルダガルデ王女殿下」と冷たく言い、部屋に戻っていった。
  きっとアリアは、こうなることが分かっていて、あの魔法を教えてくれたのでしょう。わたくしが先の先まで考えて、アリアに罰が及ぶということまで考えていたなら、このような結果にはならなかった。わたくしは自分がどれだけ愚かなのか、その時初めて理解した。わたくしは王女である自分に媚を売る者たちが嫌いだったけれど、知らぬ間にわたくしは王女であることを逆手に取って、アリアの邪魔ばかりしていたのだと。
  わたくしはその時、心の底からアリアと本当の友人になりたいと思った。
  きっとアリアはもうそれでわたくしが宿舎を訪れることはないと思っていたのでしょうけれど、わたくしは負けじと何度も何度もアリアに会いに行った。「ヒルダ。こう毎週毎週来られては、私はやりたいことが出来ない」ある日そう告げられた。「それでは、来る回数を減らすわ。・・・でもリヴァイ兄様はどうなの?あの方も私と同じように毎週のようにいらしてるけど?」「ああ、あいつも来すぎだ。来るなって言っといて。どーせ私の口からじゃ納得しないだろうから」兄様を隣にして、アリアがわたくしに言った言葉。アリアには大した深い意味はなかったのでしょうけれど、わたくしにはそれが酷く嬉しかったのを覚えている。だって、アリアとリヴァイ兄様の方がわたくしよりもずっと仲が良かったのだもの。ちょっとはわたくしの事認めてくれたのかしら、って。
  アリアはとってもちっちゃくて可愛くて、頭が切れて人類最強で、口には出さないけど思いやりもあって。王女であることよりも、今のわたくしにはアリアがわたくしの友人でいてくれる事が何よりの誇り。そして、アリアがいてくれたからこそわたくしの夫であるアルベーと知り合えたのだけど、それはまた別のお話。

 

「あれっアリア!今日はどうしちゃったの?よく似合ってるけど。ドレス姿のアリアなんていつぶりだろう!」
「やめてくれよ・・・私だって本当はお前たちと同じ制服に身を包みたかったさ」
  貴族のご婦人方と代わる代わる挨拶をしつつ会場をぐるりと回っていると、壁際でアリアが兵士とお喋りしているのが見えた。あの天然パーマの優しそうな顔は、・・・えーと確か、近衛隊の人だったかしら。クリッツェン子爵家の次男で、そう、ハンジという名前だったわ。
  飛び抜けて(むしろ「飛び抜けないで」と言ったほうが正しいかしら)背の低いアリア、ドレスを着てると本当によく目立つわ。
「アリア、楽しんでる?」
  わたくしが声を掛けると、何故かアリアは一瞬ビクついて怯えた目をしていたけれど、すぐにわたくしだと分かり眉が下がって溜息を吐き出した。
「そんな風に見えるか?ちくしょう、こんな恰好生き恥以外の何でもない。散々他の貴族連中から馬鹿にされたところだよ。いつもならなんてことないが、今日はさすがに口を封じてやりたい」
  アリアの力を知らず、ただ担がれているだけだと思っている貴族は未だ多い。アリアはそのような輩の誹謗中傷を全て受け流していたのに。きっと今日はドレスという彼女にとって不本意なものを着ているからでしょう。
「だったらちょっと気晴らしに一曲踊ってくればいいじゃない!」
「私と釣り合う男がいるか?・・・・・・身長的に。」
  目の前にいるハンジという近衛隊も、アリアよりも目測 30 センチ以上高い。
「あら、いるわよ。ほら。」
  そう言ってわたくしはアルベーの背を押した。
「あ、アルベーと?!アルベーはお前のパートナーだろう!」
「気になさらないで結構よ?わたくしあなたが踊っている所、見てるから。それに、アルベーなら身長も近いでしょう?」
「と言っても、・・・アルベー、お前何センチ?」
「 175 ・・・だったかな?」
「 25 センチも差があるじゃねぇか!」
  あら、アリアって 150 なの?それは思ったより低いわね・・・
「いいじゃないそれくらい、ほら、こちらの彼よりは低いんだから我慢なさい!それにあなたにピッタリの身長の男なんて子ども以外じゃこの国にはいないわよ!」
 ・・・そんなに ショックを受けてもしょうがないじゃない、事実なんだから。
「あ!ちょうど曲が終わったよ!ほらアリア、行こう」
  アルベーに手を引っ張られ、人混みの中へ消えていくアリア。・・・はぁ。ところでアリア、ちゃんと女性パート踊れるのかしら?士官学校で男性パート習ってやしないわよね?・・・でもま、あの身長の子に男性パート教えるわけないか。
「あなたもわたくしと一曲踊る?」
  銀髪の青年兵に聞いてみる。彼は微笑みながら、丁寧にお辞儀をした。
「申し訳ありませんヒルダガルデ王女。私は職務中ですので」
「そう言われると思ったわ。」
  遠くでアルベーと踊るアリアが見えた。なんだかんだ言っても、踊りだすと楽しいのでしょう。アルベーも優しいし。さすがわたくしの夫でしょう?
「アリアも黙っていれば、ちゃぁんとした公爵家のご令嬢に見えるのに。」
「そうですね。でも、いつものアリアもそれだけで私たち兵には女神ですから」
「ちんまいのにね」
「そこも彼女のチャームポイントです」
  このハンジとかいう青年兵、アリアのことよく分かってるじゃない。確かあの子の同級生だったかしら。
  アリアの意思とは別のところで、彼女は兵の間で戦の女神と崇められている。あのカリスマ性は、ガウェイン兄様に続くものがある。・・・とわたくしは思っている。
「・・・ヒルダ。どういうことだ」
  横のほうから低い声。ちょっと嫌な予感。
「・・・リヴァイ兄様も楽しんでいらっしゃる?」
「今全てのことが楽しくなくなった。・・・どうしてアリアが踊ってるんだ。しかも俺じゃなく、アルベーと」
「兄様もご覧に?ねぇアリア、凄く楽しそうじゃない?」
  火に油を注ぐような真似だというのは分かっているのよ。だってわたくしも母様の血を引く者。こんな時こそからかってみたくなるじゃない?
「よその男の相手をさせるためにドレスを着せたわけじゃない。お前もお前だ。どうして自分の旦那がよその女と踊っている所をただ見てるんだ。いいのか?」
「だってわたくしが仕向けたんですもの。兄様こそちょっと反応しすぎよ?男らしくどんと構えること、出来ませんの?」
  そう言うとリヴァイ兄様は腕を組んだまま、壁に背中を預けた。うふふ、イライラしてらっしゃるわ。きっとこの一曲、兄様の人生至上最も長い曲に感じられることでしょうね。
  リヴァイ兄様がアリアの事を好きなのは、わたくしは子どもの頃から知っていた。アリアは全く気付いた様子もなく、男友達のように接していたけれど。もうアリアも 23 歳、そろそろ決めないと「行き遅れ」と呼ばれちゃうのだから、兄様に早く仕留められればよいのだわ。先日など 2 人の婚約の話を聞いてひとり舞い上がったというのに、この2人ったら何やってるのかしら。
  しばらくすると、アリアとアルベーが戻ってきた。どうせなら 2 曲踊ってくれるともっと面白かったのに。でも、腕を組んだままニコニコと話ながら戻ってくる姿は、リヴァイ兄様には効果覿面だったよう。
「アリア、どうして踊ってるんだ?」
「リヴァ・・!見てたのか?!・・・いや、その、ヒルダとアルベーに気晴らしにと勧められて」
「俺とは踊ってくれないくせに、アルベーとなら踊るのか?」
「はぁ?お前となんか踊るわけないだろ!身長差を考えろよ!」
「アルベーとだって身長差があるだろう。俺と大して変わらないはずだ」
「嘘付け!お前 191 あるの知ってるんだからな!」
「愛の前には問題などない」
「お前の頭が問題だ!」
  会話の応酬が面白くってしばらく眺めていたのだけれど、いよいよ笑いが抑えきれずついにぷっと吹き出した。
「ふふっ、あははっ!もう、あなた達 2 人、うふっ、とってもお似合いよ!」
  笑いながらそう言うと、リヴァイ兄様は口を挟むなと仰りたそうな顔。アリアは少し考えてから、「じゃあ、ちょっと話をしよう」と言い、兄様の手を掴んでバルコニーの方へ歩いて行った。
  ・・・え?わたくし?そんなのもちろん、後を追うに決まってるじゃないの!

「こ、婚約の話だけど」
  アリアが辺りに人気がないのを確認してから、話しはじめる。わたくしはとっさにカーテンの陰に身を潜めつつ、聞き耳を立てた。
「ようやく心の準備が出来た?」
「そうじゃない。リヴァイお前、自分が王子だということを弁えた上であんな話を流したのか?」
「当たり前だ。お前は公爵家の娘だし、俺の相手としては申し分ない。」
  おまけにアリアは総兵士長なのよ。既に政治にも大きな影響力を持っている。
「・・・リヴァイ、お前はアークツルスの姫と結婚しろ。どうせ国は長男のアネスティス王子が継ぐだろうし、長女か次女ならお前と歳も合う。そうすればアークツルスとの同盟はより強固なものになり、アルファルドへの牽制にもなる」
  アークツルス王国はラサラスの北にあり、アークツルスもまたアルファルドと国境を交えている。今は不可侵条約の名の下、比較的自由な貿易相手として国交がある。
「いいや駄目だ。お前の言う事にも一理あるが、アークツルスが腹の中に何を抱えているのかまでは分からない。俺がアークツルスの姫と子を作り、万が一兄上に子が出来ず俺の子が次期国王になった場合、最悪国を乗っ取られる危険がある。兄上にも俺にも子が出来たとしても、もしかしたら継承権で争うことになるかもしれない。だったら、お前のように兄上とその子孫を王位に就かせることを願い、自分は補佐の立場から決して動こうとしない奴の方がよっぽどリスクは少なくて済む。」
「国外から候補を選ぶことが嫌なら、国内から選べばいいじゃないか。私はこれからも戦地に赴くだろうから、結婚したところですぐ死ぬ可能性がある。第 2 王子の妃には不安定すぎる」
「国内から選んで、また貴族間の力関係が変化してしまうのは喜ばしいことじゃない。その点お前なら幸か不幸かどうなろうと力関係なんか関係ない位置にいるし、そもそもお前は戦地で死ぬタマじゃないだろ。戦場であんなに生き生きとした笑顔でいられるのは、お前くらいなもんだぞ。」
  そう言えば以前、アリアが戦場で危ない目にあってないかガウェイン兄様に聞いた事があった。その時、「アリア 1 人対 1000 人でもアリアは絶対死なない」と返されたっけ。
「・・・いや、そんな話はどうでもいい。」
  リヴァイ兄様のこんな真面目な所、一体いつぶりに見たかしら。
「アリア。外交がどうとか、俺がしたいのはそんな話じゃない。俺はお前が好きなんだよ!」
「私だってお前の事は好きだぞ」
「そ、そういう意味じゃなくてさぁ・・・」
  押し付けは嫌われるとは言え、もう少しアリアに『恋愛』というものについて教えておけば良かったのかしら。
「じゃあどういう意味だ。私はお前の事を信頼しているし、一部尊敬しているところもある。私たちの間にそれ以上の何が必要だと言うんだよ!」
「俺はアリアが欲しい。」
「・・・は?」
「俺のものになれ、アリア。」
  きっとリヴァイ兄様は一世一代の告白のつもりなんでしょう。でもわたくし、アリアに届いた気がしないわ。
「それは出来ない。私の頭からつま先まで、心も体も全てガウェインに捧げている。」
  ほらね。あぁ、リヴァイ兄様の落胆した顔が目に浮かぶ(ちょうどわたくしの位置からでは確認できないのよ)。
「それはどういう意味?女として?」
「おん・・・そんなわけあるか!兵士としてに決まっている!」
「じゃあ、お前は誰になら女として身も心も捧げるんだ?」
  あら、兄様にしては良い質問じゃないの。
  アリアは一呼吸間を空けて、言った。
「私は誰とも結婚しない。」
「はぁ?」
  自分の口から声が漏れたかと思ったら、それは兄様の声。
「私はガウェインやお前を守るので精一杯だ。誰が私の夫になったとしても、守るべき優先順位は変わらない。それは可哀想だろ?子なんかもってのほかだ。身動き取れない間に攻め込まれたりしたらどうする?よって、私は一生、独り身でいる。」
  アリアらしい考え方だわ。さて、兄様は何て返すのかし・・・
「お前は馬鹿か!」
  リヴァイ兄様にしてはめずらしく怒鳴った(ガウェイン兄様も怒鳴ったりなどなさらないのよ)かと思うと、カツカツとすぐに去っていく足音が聞こえた。「どうしろって言うんだよ」と小さく呟くアリアの声がした後、彼女の足音が近づいてきたので慌ててその場を離れた。
  わたくしとしても、アリアとリヴァイ兄様がご結婚なさったら嬉しいのだけど。リヴァイ兄様の勝負はまだまだ続くようです。

 

2013 July 8 芹沢アツキ


トップ  戻る  次へ  時系列順目次